まず始めのところ、「むかしは、……」という描写がある。「むかし」は過去の時代を示 した。草稿『権狐』にも「むかし、徳川様が世をお治めになってゐられた頃」6との一句 は、物語の時代は江戸時代だと直に表明してくれた。物語のすべては、時代に限られ、時 代特徴を持っている。来`自^751论*文-网www.751com.cn
次に、文章から「兵十」の職業は漁師、猟師、農民だということがわかった。いずれも 古い職業である。それは、「ごん」が「兵十」に火縄銃で撃たれた結末にわけを埋めた。 それに、漁師である「兵十」の魚の取り方は、「はりきり網」でとるのである。「はりきり 網」は日本では普通の道具ではなく、岩滑地域特有で、過去でよく使われたものである。 そして『新美南吉の生涯 ごんぎつねのふるさと』によると、はりきり網の使い方はかな り難しいようである。況して、はりきり網を使ったとしても、すばしこくて人間を警戒し ているうなぎは容易に捉えることはない。そこで、「ごん」にいたずらでせっかく捕まっ たうなぎが投げ込まれた「兵十」は、きっと頭へ来るだろう。